数年前から、ちょっと気になる人がいた。
しばらくの間一緒に仕事をしていただけの、よほどの縁がなければ今後会うこともないであろう人。
実際、会うことがなくなってもう3年近くなる。
それなのに、なぜかいまだにしょっちゅう思い出す。
あの人のなにがそんなに気になるのか、自分でもわからないけど。
そして、ある日。ふと思った。
「あの人って、久保木さんにちょっと似てない?」
久保木さん。
わかる人にはわかるだろう。
元シャネルズ。ラッツ&スターのフロントマン。
どこかコミカルで、笑顔が最高に素敵なトップテナーボーカルの久保木博之さんだ。
記憶の中のあの人が、記憶の中の久保木さんと重なる。
気になり出したら、もう止まらない。
とりあえず、本当に似ているのかどうかだけ確認しようと、私はなんとなくYouTubeを開いて、なんとなく【ラッツ&スター】と検索してみた。
そして、なんとなくYouTubeを開いた、あの日から。
私の毎日は、もう久保木さん一色だ。
あの人が久保木さんに似ているかどうかなんて、すぐにどうでもよくなった。
一瞬にして恋に落ちるって、こういう感じなのかな。
その日から今日に至るまで、私は暇さえあればYouTubeを開き、シャネルズやラッツ&スターの動画を漁りまくっている。
そして、若かりし日の久保木さんが歌い踊る姿を、エンドレスにリピートし続ける。
何がどうハマったのかはわからないけれど、とにかく動画で見る久保木さんのすべてが、私の心を奪ってゆく。
まるで、中毒患者のようだ。
頭の中が四六時中、久保木さんに支配されている。
アドレナリンが過剰分泌されているせいか、夜もなかなか寝つけない。
少し冷静にならなければと、パソコンを開く。
おそらく、今の私に必要なのは「久保木さん、好き!」と叫ぶための壺なのだ(「王様の耳はロバの耳」より)。
この気持ちをどこかで発散しなければ、おかしくなってしまいそうだ。
そんなことを思いながら、キーボードを叩き始める。