鈴木さん、田代さん、桑野さんの3人が動き、喋っている姿は日頃からテレビで見ていたし、彼らがソロやバラエティで活躍していても、本業はラッツ&スターなのだと、私は信じて疑ったことがない。
その本業の姿を、テレビで一度も見たことがなかったにもかかわらず。
だけど、テレビで動いている姿は見たことなくても、彼らの歌声やトランペットの音色はレコードやCDで飽きるほど聴いていたし、顔を黒く塗ったスーツ姿もジャケット写真で散々見ていた。
いまさら驚くことは、なにもない。
(田代さんも桑野さんも、バラエティのときよりずっとカッコいい)
(鈴木さん、ソロで歌ってるときより楽しそうだな)
とは、思ったけど。
だけど、それ以上に私の興味を引いたのは、レコードやCDのジャケットでしか見たことのなかった(いや、コンサートで遠目には見ていたのだが)、残りふたりのフロントマン。
久保木さんと佐藤さんが、シャネルズ時代のジャケット写真とさほど変わらない姿で、ただもう少し(かなり?)大人になった姿でブラウン管の中に現れたとき、私は本気で感動したのだ。
そうか、これが【ラッツ&スター】か。
ラッツ&スターはUMA(未確認生物)じゃなかった。ちゃんと実在する人たちだったのだ。
あれから、さらに20年……いや、30年近くたって、私は今、あのときテレビの前で正座して見ていた映像を、YouTubeで延々リピートしている。
改めて、時代の流れの速さを感じずにはいられない。
YouTubeのサービスが、日本で開始されたのは2007年。
YouTubeを使い始めて間もない頃にも、【シャネルズ】とか【ラッツ&スター】の動画を見て興奮していた記憶がある。
これはすごい。見たことない映像がわんさか出てくる。
というか、ラッツ&スターが歌っている姿なんて、そもそも地元でのコンサートと再集結のときしか見たことないし。
ほとんどが見たことない映像だ。
その日は興奮して寝付けず、一晩中ラッツ&スターの映像を探し続けたのを覚えている。
だけど、あのときよりも今の方が重傷だ。
あのときはラッツ&スターの曲を聴くだけで十分満足していた頃だったので、そこまで映像を深追いすることはしなかった。
ところが、今はもうダメ。
「あの人に似ている気がする」と、久保木さんのところで視線を止めてしまったのが、運の尽き。
脳が、魂が、足の先から頭のてっぺんまで、私のすべてが、久保木さんを欲している。
ひとしきり動画を漁ったあとは、同じ動画を何度も何度もリピートし続ける。
今、私は人生で初めて、依存症の怖さを垣間見ているのかもしれない。