久保木博之さんへのラブレター #04

私がシャネルズのレコードを聴いていた頃にはもう、ラッツ&スターはテレビに出ていなかったと思う。
もう活動休止に入っていたのかな。

私の記憶のなかでは、田代さんと桑野さんはすでにバラエティの人だったし、私の世代だと「田代まさしと桑野信義がラッツ&スターのメンバーであることは知っている」ものの、「実際にミュージシャンとして活動している姿は見たことがない」という人が大半なのではないかと思う。

リーダーの鈴木さんは、その頃すでにソロで歌っていたはずだが、私がそのことを知ったのは、もっとずっとあとのこと。
新しい曲よりも懐メロの好きな子どもだったので、あまり歌番組を見ていなかったのかもしれないし、鈴木さんのソロは小学生の女子には渋すぎたというのもあるだろう。

だから、私にとっては「鈴木雅之がラッツ&スターというグループで歌っていた」ことはごく当たり前のことで、むしろ「ラッツ&スターのリーダーの鈴木さんがソロで歌っている」ことの方が衝撃だった。


そのようにして、私はラッツ&スターが実際に歌っている姿を一度も見ることがないまま、ラッツ&スターを聴きつづけた。

レコードのジャケット写真でかろうじてメンバーの顔は知っていたが、田代さんと桑野さん以外、誰がどの声を出しているのかも知らなかった私は、無言でジャケット写真を眺めながら、

(メインボーカルはこの人かな)
(低音はきっとこの人)
(こんな高音、誰が出してるんだろ)

と、ひとりで勝手な予想を繰り広げて遊んでいた。
それくらい、ラッツ&スターは当時すでに過去の人たちだったのだ。

母から「すごい人気だったのよ」と聞かされても、今ひとつピンとこない。
いかにも女の子うけしそうなチェッカーズが「すごい人気だった」というのは、なんとなくわかる気がするのだが……。

ちなみに当時の私の予想では、久保木さんがメインボーカルで、鈴木さんがボンボンボンのベースボーカル。見事に外れ。
いちばんわからなかったのは、やっぱり久保木さんの高音。誰ひとり、あんな声を出せる顔には見えなかった。

インターネットもない時代。どのように、その答えを知ったのだろう。

もしかすると、あれかな。
昔は、年代別のヒット曲をちょっとずつ映像で流してくれる懐メロ番組が、ときどきあったのだ。
ラッツ&スターはだいたい、シャネルズ時代の“ランナウェイ”か“街角トワイライト”だったけど、あれで答え合わせをしたのかな。

ほんのワンフレーズではあったけれど、振り付きで歌うシャネルズを見ることのできる貴重な番組だった。