そして、再集結のときの久保木さん。
ちょうど40歳に手が届く頃だろうか。顔つきにもダンスにも角がとれたような柔和さがあり、見ているこちらまで頬がゆるんでしまう。
それでもまだ、今の私よりは年下だけど、これくらいの年の差ならばデレデレしても許されるのではなかろうか。
なにより、20代の頃より、30代の頃より、40代の久保木さんがいちばん素敵だと思える自分の良識に、私は心からの拍手を送りたい。
そんな再集結のときの映像を見ていて、ふと気付いたことがある。
その映像だけ、見ていてやたら懐かしく感じるのだ。
懐かしいというか、「私、この久保木さん知ってる」という既視感のようなもの。
実際、20歳のときにテレビにかじりついて見ていた映像なのだから既視感はあって当然なのだが、不思議なことに、ほかのメンバーの姿を見てもそうは感じない。
久保木さんに対してだけ、懐かしさを感じるのだ。
ああ、そうか。
少しずつ、記憶が甦ってくる。
ラッツ&スターの再集結の様子を、テレビの前で正座して見ていた20歳のとき。
思い起こせば、あのときも私は久保木さんばかり見ていたではないか。
今みたいな「久保木さん好き!」という感情があったわけではないが、もともと久保木さんの雰囲気が私の好みに合っていたのだろう。
「久保木さんって、なんかいいな」と感じたこと、録画したビデオを久保木さん見たさに何度も巻き戻していたことが、不意に思い出される。
なんだか、不思議な気分だ。
小学生の頃から、ずっと好きだったラッツ&スター。
誰のファンというわけでもなく、ただラッツ&スターというグループが好きだった。
今までずっと、そのなかのひとりに過ぎなかった久保木さんに、まさか35年という歳月を経て、これほどまでにハマってしまうとは。
もともと細い目を、さらに細めて笑うときの表情が好き。
小柄だけど、すっと伸びた背筋と広い肩回りが男っぽくて。
ちょっとコミカルなキャラクターや、やんちゃくさい雰囲気もたまらない。
完全に沼だ。底なしだ。
正直言うと、私は今、ちょっと混乱している。
久保木さんという人が、私の中であまりにも突然クローズアップされてしまったことで、自分の感情についていけないのだ。
旧知の仲である数十年来の友人に対し、突如として恋愛感情が芽生えるというのはこういう感じなのだろうか。
今、久保木さんは66歳。
初老を過ぎた久保木さんは、どんなおじさんになっているのだろう。
でも、今の久保木さんも、今から10年後の久保木さんも、私はきっと好きだと思う。