浮気なエンジェル

ラッツ&スター(シャネルズ)の曲といえば、やっぱり“ランナウェイ”か“め組のひと”、もしくは“夢で逢えたら”を挙げる人が多いと思うんだけど、私にとってシャネルズの曲といえば“浮気なエンジェル”。
一瞬たりとも迷わず“浮気なエンジェル”だ。

単純に「ノリがよくて楽しい曲だから」というのもあるんだけど、それだけじゃない。

私にとってラッツ&スターとはUMAのような存在で、ラッツ&スターというグループの情報源は当時レコードの中にしかなかった(ということは『久保木博之さんへのラブレター』のなかでも書いていたと思う)。

田代さんや桑野さんがコントをやっているのはリアルタイムで見てたけど、そもそもラッツ&スター自体がギャグやコントを好んでやっていたのだということは、まったく知らなかった。
多分、今回、久保木さんにどハマりして、いろいろ調べているときに知ったんだと思う。

多分というのは、今さらそれを知っても全然驚かなかったし、意外だとも思わなかったから。
「もしかして、本当は前から知ってたんじゃね?」
と、自分でもちょっと思ってるくらい。

意外に思わなかったのは、きっと私がラッツ&スター(シャネルズ)のヒット曲だけでなく、まんべんなくいろんな曲を聴いていたからだと思う。

そんななかでも、“浮気なエンジェル”はラッツ&スターの個性がぎゅっと詰まった曲だ。
フロントメンバー1人ひとりのキャラクターとか、コミカルなことをやってるグループなんだなとか、そういうことが手に取るようにわかる。
そういう意味で、私にとって“浮気なエンジェル”はラッツ&スターそのものなのだ。


あとは、まぁ、単純に女の子は憧れるよね。

「どうして可愛いの?そんなに」
「夢中だよ、誰もがイカれてるよ」

こんなこと、誰だって言われたいに決まってる。
“浮気なエンジェル”は、女の子たちにそんな夢を見せてくれる曲。
まぁ、私はもう女の子って年ではないけれど、ラッツ&スターを聴いてるときだけは、ついつい10代の女の子に戻っちゃうからね。

でもね、このエンジェル。
タイトルは“浮気なエンジェル”だし、歌の中でも「誰にも気のありそうな」とか言われてるけど、本当はそんな移り気な女の子じゃないんだと思う。

エンジェルの胸のロケットには、心に決めた人の写真が入っている。
とても笑顔の素敵な女の子で、男の子たちはみんなメロメロになるんだけど、彼女にはすでに心に決めた人がいるから、誰に声をかけられても振り向かない。

可愛い女の子が、にっこり笑いかけてくれる。
(=自分に気があるに違いない)
それなのに、なぜか振り向いてくれない。
(=浮気な子)

“浮気なエンジェル”は、そんな男の人の勘違いが目いっぱい詰まった、愛すべき曲だ。


あと、これも知らなかった(忘れてた?)んだけど、“浮気なエンジェル”って“週末ダイナマイト”のB面曲だったんだね。
“週末ダイナマイト”のシングル盤、母が持ってたな。
全員が違う衣装を着て、こちらに駆け寄っててくる、あのカラフルなジャケット写真。
あれ見てたら、同級生や幼なじみが集まってできたバンドだって知らなくても「仲のいいグループなんだろうな」って、なんとなくわかるもんね。


(追伸)今、私の心のロケットにいるのは、やっぱり久保木さんです。
久保木さん、元気かな。


夢で逢えたら

YouTubeで見つけた、あの年の紅白歌合戦。
再集結したラッツ&スターが歌う“夢で逢えたら”。

ああ、そうだった。
みんな、真っ白のスーツ着てたなぁ。
そうそう、田代さんのこのセリフ。
出雲さんが、レコードのジャケット写真で見てた出雲さんよりも、ちょっと恰幅よくなってて。

おぼろげながら、当時テレビで見ていたときの記憶がよみがえってくる。


大瀧詠一さんの作詞・作曲による曲。
100を超えるカバー曲が存在するという“夢で逢えたら”を初めてヒットさせたのが、男性ヴォーカリストの鈴木雅之さん率いるラッツ&スターだったというのは、有名な話。

素敵。なんか夢があっていいよね。


夢でもし逢えたら 素敵なことね
あなたに逢えるまで 眠り続けたい


改めて歌詞を見直すと、“トゥナイト”がひたすら「tonight!」を繰り返しているように、“夢で逢えたら”もほぼ上記の歌詞で埋め尽くされている。

それにしても、この“夢で逢えたら”という曲は、今の私の心情をそのまま映し出しているようだ。

ラッツ&スターに、久保木さんに、逢いたくて逢いたくて。
夢でもいいから、逢いたいと思う。
でも、目が覚めた瞬間、どれだけ切なく悲しい気持ちになるかも知っている。

ラッツ&スターの“夢で逢えたら”がヒットしたのは、「男性ヴォーカリストが歌う」という意外性や「ラッツ&スターが再集結で歌った曲」というドラマ性もあったのだとは思うけど、多分それだけじゃない。
女性ヴォーカリストの歌う“夢で逢えたら”は、ほのぼのとした恋の歌。
だけど、鈴木雅之さんが歌う“夢で逢えたら”には「素敵なことね」の裏に込められた切なさが、強く感じられる。

そこだと思うな。


あの記念すべき、第47回紅白歌合戦。
間奏中の田代さんのセリフ。

「デビュー16年。紅白初出場、ラッツ&スターです」

こうして文字にするとサラッとして見えるけど、この一行には多分メンバーそれぞれの、いろんな想いが詰まっているんだろうなと思うと、もうそれだけで何度でも泣けてくる。

「この曲をラッツのファンの方たちと大瀧詠一さんに捧げます」

現役時代を知らない私でも、そのファンのひとりに入れてもらっていいのかな。


夢でもし逢えたら 素敵なことね
あなたに逢えるまで 眠り続けたい


どんなに逢いたいと思っても、朝になれば起きなきゃならない。

だから、今夜はもう寝よう。
おやすみなさい。

ちょっとでいいから、逢えたらいいな。

大瀧詠一さんと“FUN×4”

私が大瀧詠一さんの存在をハッキリと認識したのは、ドラマ『ラブジェネレーション』の主題歌である“幸せな結末”が大ヒットしたとき。

基本的にあまりテレビを見ない人間で、ドラマの類もほとんど見ないため、『ラブジェネレーション』のストーリーはよく知らないけれど、この主題歌は聴いた瞬間「あ、これ好き」と思った。
歌詞もメロディーも声も、全部がいい。

「これ、大瀧詠一の歌なんだ」

って思った記憶があるから、大瀧詠一さんの名前は知ってたんだと思う。

そりゃそうだよね、ラッツ&スターが再集結で“夢で逢えたら”を歌った次の年だもん。
そもそも、私が“Tシャツに口紅”や“星空のサーカス”を作曲した人の名前を知らなかったはずがないし。

ただ、大瀧詠一さんを歌手として認識したのは、そのときが最初だったと思う。


それから、さらに20年がたったある日のこと。
仕事中、移動のために当時の勤務先の社長の車に同乗していたところ、オーディオからシュールでポップな音楽が流れてきた。優しげなのに、どこか淡泊な男性歌手の声。

なにこれ、誰の歌?
聴いた瞬間すごく好きだと思ったけど、社長に「これ誰のCDですか?」と質問することもできず悶々としていると、

「一人で二人で三ツ矢サイダー」

という聞き覚えのあるフレーズが。
その日の休憩時間に、頭の片隅に残っていたそのフレーズをスマホで検索する。

「あれ、大瀧詠一だったんだ……」

歌手・大瀧詠一を認識した二度目の出来事。


でも、そのときはまだ知らなかったんだ。
ラッツ&スターと大瀧詠一さんの間に、デビュー前からの深い関係性があったこと。

私が10代の頃ってインターネットも普及してなかったし、ラッツ&スターの情報を得る手段なんて、ほとんどなかったもんね。
ほんとに何も知らなかったんだな、私。


私は、大瀧詠一さんの曲のなかでは“FUN×4”がいちばん好きなんだけど、この曲のコーラスのほんのワンフレーズだけ、ラッツ&スターが歌ってるんだよね。

それを知ったときの衝撃といったら、もう。

もともとのラッツ&スターや大瀧詠一さんのファンにとっては当たり前のことも、一世代あとで生まれた私には、1つひとつの事実が新鮮な驚きをもたらしてくれる。


ラッツ&スターに“FUN×4”歌ってほしいなぁ。
できれば、この曲はフロント4人全員のソロが欲しい。
ワンコーラスごとに、

1番 佐藤善雄
2番 久保木博之
3番 田代まさし
4番 鈴木雅之

の順でどうでしょうか。
久保木さんのソロパートに合わせて「散歩しない?」って、最大限に可愛い声で合いの手入れたい。

(追伸)月に吠える役目は、もちろん新保さんでお願いします。

ラッツ&スターは不死鳥か

“ランナウェイ”で97.5万枚を売り上げ、シャネルズとして華々しくデビュー。

不祥事による半年間の謹慎期間を経て、“街角トワイライト”をリリース。71.7万枚を売り上げての完全復活。

シャネルズからラッツ&スターに改名し、1枚目となるシングル“め組のひと”で62.2万枚の大ヒット。

そして、1996年の再集結。
通算18枚目となるシングルで大瀧詠一さん作詞・作曲の“夢で逢えたら”をカバーし、44万枚を売り上げ。
多くのアーティストがカバーしてきたというこの曲を、初のヒットに導く。


ラッツ&スター。


何度でも、不死鳥のように蘇ってくる。
ここぞというときに力を発揮するのが、ラッツ&スター。
ここまでの底力をもったグループは、ほかにないんじゃないだろうか。


ラッツ&スターは、まだ終わってない。
もう一度、メンバー全員が揃って息を吹き返してくれるって、私は信じてるからね。

ラスト・ワーズ/星くずのダンス・ホール

ラッツのバラードといえば、知名度でも人気度でも、まず“涙のスウィート・チェリー”と“Tシャツに口紅”が挙がると思う。

私も、もちろん好き。


でも、いちばん好きなのはアルバム『Hey!ブラザー』に収録されている“ラスト・ワーズ”。

“涙のスウィート・チェリー”や“Tシャツに口紅”には、胸が締め付けられるような切なさがあるけど、“ラスト・ワーズ”は同じスロー・ナンバーでも鬼気迫るものがある。

「お前の震える…」「笑顔がこんなに…」の二段階で転調するところとか、あとハモリの効果もあるのかなぁ(あのハモリは誰なんだろう)。


とにかく、私にとって深い印象的を残した曲。

どれだけ印象深かったかというと、小学校6年生の時。卒業文集に寄せるメッセージに一言タイトルをつけなきゃならなくて、そこに“ラスト・ワーズ”って書いたほど。

渋すぎだろ、小学6年生。


あと、“星くずのダンス・ホール”もいい。

『ダンス!ダンス!ダンス!』に収録されていた曲。

ひたすらロマンティックな曲で、サビの部分のコーラス「ポンポンポンポン」とギターの音色が、まるで夢見てるような気分にさせてくれる。

シャネルズの真骨頂。

夢で逢えたら”も、“星くずのダンス・ホール”に近い雰囲気がある。
すごくロマンティックで、夢みたいな曲。

今となっては、夢そのものかもしれない。