久保木博之さんへのラブレター #03

外見については、久保木さんが一般的な『イケメン』の枠から外れていることは、さすがに認めざるを得ないだろう。

世の女性はとかく、高身長が好き。
そして、目鼻立ちのハッキリとした人が好き。
それが、世に言う『イケメン』。昔の言い方をすると『ハンサム』の条件だ。
要は、ベースボーカルの佐藤さんみたいな人ね。


しかし、それがなんだというのだ。
世間一般の好みがどうであれ、私は久保木さんのあの顔が好きで好きでたまらない。

「すん」とすましかえっているときも、斜に構えた表情も。
目尻と眉尻を目いっぱい下げて、子どものように笑う顔も。

「目は口ほどにものを言う」とはよくいったもので、YouTubeの映像や古い写真の中、コロコロと変わる久保木さんの表情から、私はもう目を離せない。

とくに、笑顔が素敵よね。やっぱり、久保木さんといえば笑顔だもん。

笑顔の素敵な人って、本当に男女を問わず人を沼らせる。


そんなふうに、いい年して「恋に落ちた」などとほざいている私だが、実は小学生の頃からのラッツ・ファンだったりする。
のめり込むと、結構しつこく想い続けるタイプなのだ。


いつからだろう。
気が付けば、私の隣ではいつもシャネルズの曲が流れていた。

よくある話だが、もともと私の母がシャネルズを好きで、物心ついた頃から家の中でも移動中の車の中でも、いつもシャネルズの曲がかかっていた。
シャネルズの曲に合わせてツイストを踊る母の姿も、うっすら記憶に残っている。

小学校の4年生か5年生くらいになると、私は母が持っていたレコードを勝手に引っ張り出し、自分でシャネルズの曲をかけて聴くようになっていた。

6年生のときだったかな。
シャネルズのレコードジャケットを部屋に飾っておいたら、それを目にした兄の友人が「お前の妹、趣味悪いな」と言っていたと聞かされたことがある。
もちろん、私はそんなことでは動じない。

「ラッツのよさは、子どもにはわからないでしょうよ」

なんとでも言えばいいと、心のなかで思っていた(私も子どもだったけど)。


とはいえ、時代は光GENJIの全盛期。
同級生の女の子たちが「かーくん」だの「赤坂くん」だの騒いでいたときに、私はひとりシャネルズのレコードを聴いていたわけだ。

それをことさら隠しもしなかったので、親しい友人はみんな私がラッツ&スターのファンであることを知っていたが、さすがに同年代の女の子たちとは話が合わなかったなぁ。

かなり異質な小学生であったのは、間違いない。

久保木博之さんへのラブレター #02

ラッツ&スターというのは本当に素晴らしいグループで、一見キワモノのようでもあるし、コミックバンドのようでもあるが、実はメンバーの1人ひとりが才能豊か、個性豊かな粒揃いだ。

田代さんはダンスの振り付けから作詞や絵、MCまでこなす天才肌。
甘いルックスと渋い低音で女性ファンを魅了した、ベースボーカルの佐藤さん。
桑野さんと新保さんは楽器を演奏するだけでなく、歌の上手さでも群を抜いている。
リーダー鈴木さんの圧倒的な歌唱力については、もはや語る必要もない。

そんななか、久保木さんはフロントメンバーにしては目立たないというか、もうひとつ抜けきらない印象があったかもしれない。
久保木さんの高音。
あの高音があるからこそ、より鈴木さんの歌が引き立つのに。低音ほどのインパクトがないからなぁ。

どうやら、ほかの3人や桑野さんに比べると、喋りもあまり得意ではないようだし。


そして、久保木さん。声はいいんだけど、歌は多分そんなに上手くない。だからかな、ソロが少ないの。

歌の上手さでいえば、田代さんや佐藤さんもさほど上手くはないんだけど、ふたりともわかりやすいポジションを確立しているからな。

だけど、貴重な久保木さんのソロをひと通り聴いてもらえばわかるように、実は久保木さんっていろんな声を持つエンターテイナーなのだ。
ただ、シリアスな役回りには向かないので、使いどころが難しいというのはあるかもしれない。

個人的には、あのやんちゃくさい顔で“恋は命がけ”のような可愛い声を発しているというのは、萌え要素しかないんだけど。


一方、ダンスに関しては、久保木さんは結構うまいと思う。

「ダンスといえばマーシー」と思っている人も多いだろうが、田代さんがテクニックで踊る人なら、久保木さんは体幹で踊る人(だと、私は思っている)。

久保木さんのダンスには、軸のぶれない安定感がある。
立ち姿や決めポーズも決まっているし、手指や足先の動きなど、要所要所のディテールの美しさはメンバーの誰にも引けをとらない。

田代さんが「魅せ方」の上手い人だとすると、久保木さんは「体の使い方」が上手い人。
『WHISKY A GO GO』のライブ映像で、“SPEEDO’S BACK IN TOWN”の最後のジャンプを見たときにも思ったけど、身体能力の高い人なのだと思う。

あとから知ったところによると、中学・高校時代はかなり真剣に剣道をやっていたらしい。
なるほど、久保木さんのダンスのルーツは剣道か。
武道は型が命だもんね。体幹も鍛えられるし。


そんなことを思いながら、私は今日も、久保木さんのすっと伸びた背筋と肩のラインに言いようのない色気を感じながら、YouTubeの映像を前にひとり悶絶するのだ。

久保木博之さんへのラブレター #01

数年前から、ちょっと気になる人がいた。
しばらくの間一緒に仕事をしていただけの、よほどの縁がなければ今後会うこともないであろう人。
実際、会うことがなくなってもう3年近くなる。

それなのに、なぜかいまだにしょっちゅう思い出す。
あの人のなにがそんなに気になるのか、自分でもわからないけど。


そして、ある日。ふと思った。

「あの人って、久保木さんにちょっと似てない?」

久保木さん。
わかる人にはわかるだろう。

元シャネルズ。ラッツ&スターのフロントマン。
どこかコミカルで、笑顔が最高に素敵なトップテナーボーカルの久保木博之さんだ。

記憶の中のあの人が、記憶の中の久保木さんと重なる。

気になり出したら、もう止まらない。
とりあえず、本当に似ているのかどうかだけ確認しようと、私はなんとなくYouTubeを開いて、なんとなく【ラッツ&スター】と検索してみた。


そして、なんとなくYouTubeを開いた、あの日から。

私の毎日は、もう久保木さん一色だ。

あの人が久保木さんに似ているかどうかなんて、すぐにどうでもよくなった。
一瞬にして恋に落ちるって、こういう感じなのかな。


その日から今日に至るまで、私は暇さえあればYouTubeを開き、シャネルズやラッツ&スターの動画を漁りまくっている。
そして、若かりし日の久保木さんが歌い踊る姿を、エンドレスにリピートし続ける。

何がどうハマったのかはわからないけれど、とにかく動画で見る久保木さんのすべてが、私の心を奪ってゆく。


まるで、中毒患者のようだ。
頭の中が四六時中、久保木さんに支配されている。
アドレナリンが過剰分泌されているせいか、夜もなかなか寝つけない。


少し冷静にならなければと、パソコンを開く。

おそらく、今の私に必要なのは「久保木さん、好き!」と叫ぶための壺なのだ(「王様の耳はロバの耳」より)。
この気持ちをどこかで発散しなければ、おかしくなってしまいそうだ。

そんなことを思いながら、キーボードを叩き始める。

久保木博之さんへのラブレター

[目次]

久保木博之さんへのラブレター #01

久保木博之さんへのラブレター #02

久保木博之さんへのラブレター #03

久保木博之さんへのラブレター #04

久保木博之さんへのラブレター #05

久保木博之さんへのラブレター #06

久保木博之さんへのラブレター #07

久保木博之さんへのラブレター #08

久保木博之さんへのラブレター #09

久保木博之さんへのラブレター #10

久保木博之さんへのラブレター #11

久保木博之さんへのラブレター #12